キッチンカーキットの開業マニュアル|必要な資格・許可
キッチンカーのように移動先で簡単に店舗が開けるキッチンカーキットですが基本的には屋台として許可を申請します。
キッチンカーキットは高額なテナント料や開業までのハードルが低いメリットがあります。ただし営業活動を行う前に
取得しておかなくてはならない資格や許可もあります。事前によく理解しておきましょう。
目次
1.屋台とは
2.屋台を開業するために必要な資格「食品衛生責任者」の取得方法
3.取得にかかる費用
4.取得時の注意点
5.自治体の「営業許可」の取得方法
6.取得にかかる費用や取得時の注意点
7.屋台を開業するまでの流れ
8.屋台を始めるならパインドへ
9.まとめ
1.屋台とは
屋台とは屋根が付いていて移動が可能で飲食物や玩具などを売る小さな店舗です。設置も簡単で、リアカーや車を改造したものや、
簡易テントを利用したタイプもあります。
2.屋台を開業するために必要なもの
屋台で飲食店を開業場合は、屋台の他に用意しておくべきものがあります。
キッチンカーキットや普通の屋台での開業であっても、食品衛生責任者の資格と営業許可は取得しておかなくてはなりません。
「食品衛生責任者」の資格
食品衛生責任者とは、HACCPに沿った衛生管理をはじめ、施設や店舗における衛生管理を行う立場の人です。令和3年の法改正により、
営業許可または営業届出の対象となるすべての業者が、食品衛生責任者を設置することが義務付けられています。
HACCP(ハサップ)とは「Hazard(危害)・Analysis(分析)・Critical(重要)・Control(管理)・Point(点)」の頭文字を取った略語です。宇宙食の安全性を確保するための基準でしたが、現在は世界的な衛生管理の手法となっています。
屋台や露店又通常店舗の飲食店を経営するときは、必ず食品衛生責任者を設置する必要があります。
取得方法
食品衛生責任者の資格は、各都道府県の関係団体が定期的に開催している衛生講習会を受講することで、誰でも手軽に取得できます。
食品管理や衛生に関する基礎知識を学び修了証を受け取ります。
3.取得にかかる費用
食品衛生責任者の資格を取得するための費用は、都道府県によって異なりますがおおよそ8000円~10000円程度です。
講習内容などの全国標準化により、平成9年より一度取得した食品衛生責任者の修了証は全国で使用できるようになりました。ただし6時間以上の受講を満たしている必要があるため、他県での取得を検討している方は、事前に受講時間や他県でも使用できる資格かどうかを確認して下さい。
4.取得時の注意点
食品衛生責任者の資格は、衛生講習会の受講者以外にも、医師や薬剤師など特定の資格を有する方は講習会を受講する必要がありません。飲食業界であげると、栄養士、調理師、製菓衛生士、船舶料理士などが該当します。
すでに栄養士や調理師などの資格を取得しているのであれば、改めて衛生講習会を受講しなくても食品衛生責任者として活躍できます。
5.自治体の「営業許可」
屋台や露店など飲食物の調理や販売を行う場合、自治体の営業許可を取得する必要があります。地域の保健所より経営計画や設備、衛生面などの安全性の確保が基準を満たしているか確認されたうえで発行される許可証です。
営業許可を取得しないまま屋台や露店で飲食店を経営すると、営業停止及び2年間営業許可を新たに取得できなくなります。
取得方法
営業許可は地域の自治体ごとに取得をします。県をまたいで営業する場合は出店予定の地域ごとに営業許可を取得する必要があります。
営業許可には複数の種類があり、提供する食品によって必要な許可がかわってくるため、事前に自治体の保健所へ相談しておくと良いでしょう。申請時は屋台または露店の図面等の提出も必要となります。
6.取得にかかる費用
営業許可の申請時に手数料として17000円前後かかります。
申請先の保健所は厚生労働省のホームページで「保健所管轄区域案内」を参照すると、営業したいエリアを管轄している保健所が分かります。
取得時の注意点
保健所に営業許可取得に関する問い合わせを行うときは、必ずキッチンカーキットで屋台としての営業であることを告げて相談してください。
自治体によっては、露店営業そのものが禁止されている場合もあります。直接確認しなければ分からないため、
保健所への問い合わせ時は露店での営業を考えていることを相談して出店の可否から確認することが必要です。
7.キッチンカーキットで屋台営業をするまでの流れ
開業するまでの主な流れは、以下のとおりです。
7-1.衛生講習会を受講して食品衛生責任者の資格をとる
7-2.出店予定地の保健所で事業内容の相談をする
7-3.設備を整える
7-4.出店地の保健所に営業許可申請を提出する
7-5.保健所で設備の確認を受け営業許可証を発行してもらう
まずは衛生講習会を受講して食品衛生責任者の資格を取得します。食品衛生責任者の資格がなければ、営業許可の申請を出すこともできません。
申請する前に出店を予定している地域の保健所で事業内容についても相談する必要があります。
相談時に問題ないと判断されてから営業許可申請を提出してキッチンカーキットや機材等の手配をして保健所でのチェックに入ります。
無事に営業許可を取得したら、晴れて開業です。
8.屋台を始めるならパインドへ
屋台を始めたいけれど、設備の制作や手続きが多くて不安だという方は、「パインド」にご相談ください。
申請時の書類やサポート行っています。
キッチンカーキットでの飲食店開業を目指している方は、ぜひ一度お問い合わせください。
9.まとめ
屋台や露店での飲食店開業も通常店舗と同じく食品衛生責任者の資格と営業許可を得る必要があります。
きちんと段取りを組み手順どおりに進めていけば問題なく取得できるものです。
キッチンカーの営業許可(参考)
2021年6月1日より改正・食品衛生法が施行されました。
食品衛生法の改正により、併せて全国の保健所で管轄している営業許可のルールも変更されることとなり、キッチンカーにも大きく影響することになります。
5 5、改正・食品衛生法施行に向けた具体的なキッチンカーの対策
1、2021年6月1日以降のキッチンカーの営業許可
1-1、食品衛生法の改正の大枠
改正食品衛生法は2018年6月13日に食品衛生法等の一部を改正する法律が公布されたことによります。改正の主旨は多岐に渡りますが、キッチンカーに関係するところとしては、食中毒の対策強化のため、食品や器具、容器などの基準の国際化、事業者の衛生管理の向上、それにともなう営業許可等の基準の見直しです。
詳しくは厚生労働省のサイトで確認することができます。
概要https://www.mhlw.go.jp/content/11131500/000345946.pdf
背景・主旨https://www.mhlw.go.jp/content/11131500/000345948.pdf
改正の概要https://www.mhlw.go.jp/content/11131500/000481107.pdf
東京都資料「食品衛生法が改正されました!」より抜粋しています。
1-2、改正・食品衛生法の中心となるHACCP
改正の目的の一つに、衛生管理方法の国際化があります。これは具体的にはHACCP(ハサップ)のことで、HACCPとは「事業者自らが、食中毒菌汚染等の危害要因をあらかじめ把握(Hazard Analysis)した上で、原材入荷から製品出荷まで の全工程の中で、危害要因を除去低減させるために特に重要な工程(Critical Control Point)を管理し、製品の安全性 を確保する衛生管理手法」というものです。
HACCPによる衛生管理<厚生労働省 法改正説明資料より抜粋>
キッチンカーを含む小規模事業者は、効果的なHACCP計画を立てるための財源や専門的知識がないケースが多いので、保健所や業界団体や専門家等から、積極的に専門的助言を受けるようにしましょう、ということになっています。
保健所に相談すると、主に食品の管理方法と記録についてアドバイスを受けることができます。
HACCPに関する書籍も多く出版されており、厚生労働省もHCCPに関する動画を配信しています。
2、改正・食品衛生法で変わるキッチンカーの変更点
2-1、2021年6月以前の営業許可と2021年6月以降の営業許可の混在になる
今回の食品衛生法の改正による変更点は多岐に渡ります。キッチンカーの設備基準も全国で統一されるなど大きく変わります。
他の法律でもそうですが国としては、新しい法律が施行される際、すでに営業している事業者の権利が失われたり、設備改修するために事業者に新たな負担をかけない方針です。改正・食品衛生法も同様で、この記事を書いている2021年1月現在の食品衛生法とそれに関する条例の設備基準で、すでに営業許可を取得しているキッチンカー事業者に対しては、
現在取得している営業許可は有効期限まで有効
有効期限満了後に、次の営業許可の更新の場合も現行の設備で認める方針
ということになると考えられています。
つまりしばらくの期間は、旧基準(現在の)営業許可と、新基準の営業許可の2種類が混在します。
1回の営業許可は5年間の有効期限となっていますので、すでに営業許可を取得済みのキッチンカー事業者の方は、次回の営業許可の再申請をする前までに管轄の保健所の確認をお願いします。
2-2、菓子製造業・喫茶営業の営業許可がなくなる
細かく解説するといろいろあるのですが、自動車による営業許可、いわゆるキッチンカーで取得する営業許可はこれまで、「飲食店営業」「菓子製造業」「喫茶店営業」の3種類が中心でした。
改正・食品衛生法以降はキッチンカーで「菓子製造業」「喫茶店営業」の区分がなくなり、「飲食店営業」に一本化されます。
菓子製造業がなくなるのは自動車営業に関してのみです(固定施設による菓子製造業はなくなりません)。改正・食品衛生法の施行後は、すべて飲食店営業にまとめられることになりますが、現行の菓子製造業(自動車)も営業許可の基準がやや緩和される傾向だと言われています。
2-3、キッチンカーの設備基準が全国統一になる
キッチンカーの出店は都道府県をまたぐことも多く、自分の営業したい都道府県すべての設備基準を満たす必要がありました。
しかし、この設備基準は隣接する都道府県でも大きく異ることがあり、また営業許可申請書類もそれぞれ違うため、営業許可を取得するまでに非常に煩雑なものとなっていましたが、全国で統一の基準になります。
今回の食品衛生法改正の目的として、全国的に異なっていた設備基準の統一を図る目的があり、都道府県ごとに存在していた設備基準の違いが解消されていくようです。
2-4、普通車と軽自動車の違いがなくなる
設備基準の統一とともに、この普通自動車、軽自動車の違いによる設備基準も統一となるため、軽自動車や普通自動車のメリット・デメリットも平均化されていきます。
改正食品衛生法の施行後は、普通自動車と軽自動車による設備要件の違いが解消されていきます。
2-5、各都道府県にあった異なる設備基準の今後の考え方
これまで東京都では「シンクは幅45cm×奥行き36cm×深さ18cm以上」という他の都道府県にはない設備基準がありました。
「施行後は、新規の営業許可申請の際、これまであったシンクのサイズ基準に満たないことで営業許可が下りなくなることはありません。しかしこれまで東京都下ではこのシンクサイズで多くのキッチンカーが稼働していますので、推奨サイズとか、参考サイズとかといった基準として残ることになると考えています。
2-6、非接触水道の導入
キッチンカーにおける設備基準の大きな変更点として「非接触水道」の導入があります。これもHACCPの管理ルールによるものです。これまでキッチンカーでも認められてきている一般的な蛇口の水栓ですがこれが通常のままでは不適合となります。
2021年6月以降に新しく中古キッチンカーを購入して営業許可を申請する際には注意が必要です。なお、非接触水道は、手洗い槽の蛇口のみ対応していれば問題ありません。
2-7、器具や容器で使えない素材
キッチンカーの施設や、調理器具、容器などで使用することができない素材が出てきます。給水タンクや、給水配管やホース、など食品衛生法の基準を満たしていない素材でできているキッチンカーもあったりしました。それぞれのパーツが食品衛生法に適合しているかを確認するのが確実です。
2-9、給排水設備に必要なタンク容量が40㍑、80㍑、200㍑の3種類になる
キッチンカーは自動車で移動して販売をする目的のため、これまでも独自の、独立した給排水設備を搭載する必要があります。
この給排水設備もまた、都道府県ごとに異なる設備基準で運用されていましたが、改正・食品衛生法の施行後は、40㍑程度、80㍑程度、200㍑程度の3種類に統一されます。
この給排水タンクの容量によりキッチンカーで認められる調理工程や提供メニューが変わってきます。
3.給排水タンク容量による営業許可の違い
3-1、キッチンカーの給排水タンク容量についての解説
2019年12月に厚生労働省から全国の知事や保健所に対して次の通達が出ました。
キッチンカーに備え付けられている給排水のタンクの容量により提供できる品目や調理工程の許可する範囲を変えるという内容で全国に通達されました。
引用元:https://www.mhlw.go.jp/content/11131500/000582226.pdf
給水・廃水タンクの容量が 40 リットル程度 ・ 簡易な調理のみ(温める、揚げる、盛り付ける等)を行うこと、 又は単一品目のみ取り扱うこと ・ 使い捨て食器を使用する
給水・廃水タンクの容量が 80 リットル程度 ・ 大量の水を要しない、2工程程度までの簡易な調理を行うこ と、又は複数品目を取り扱うこと ・ 使い捨て食器を使用する
給水・廃水タンクの容量が 200 リットル程度 ・ 大量の水を要する調理を行う、複数の工程からなる調理を行 うこと ・ 通常の食器を使用すること
40㍑以上、80㍑以上、200㍑以上という区分はこれまで東京都と群馬県の2都県で採用していた設備基準ですので、東京都の設備基準に合わせたものと思われます。今回は全国に適用する大きな変更でもありますので移行を柔軟にするために、40㍑程度、80㍑程度、200㍑程度として、緩和されています。
3-2、40㍑、80㍑、200㍑ 提供品目数のちがい
改正・食品衛生法の施行後に新たに営業許可を取得する場合、給排水タンクの容量によって、提供可能な品目数が変わってきます。単一品目とは、ポテトならポテト1品で1カウントされます。1メニューだけ提供が可能です。この場合、例えば他にドリンクなどを同時に提供することができません。複数品目とは、からあげ+ポテト+ドリンクなど、異なる複数のメニューを1台のキッチンカーで提供できるという営業許可の条件です。
80㍑と200㍑では同じ「複数品目」となっていますが、ともに品目数無制限ということではなく、保健所によってはキッチンカーに搭載された設備で可能な程度の複数品目、調理工程の範囲によります。
3-3、40㍑、80㍑、200㍑ 提供容器のちがい
改正・食品衛生法の施行後に新たに営業許可を取得する場合、給排水タンクの容量によって、提供に使える食器が異なります。
40㍑または80㍑の区分で営業許可を取得したキッチンカーでは、すべてのメニューで使い捨て容器を用いて提供する必要があります。
200㍑の区分で営業許可を取得したキッチンカーでは、洗浄可能な食器を再利用して使用することができます。
3-4、40㍑、80㍑、200㍑ 大量の水を要する調理とは
ラーメンやうどんなどが「大量の水を要する調理」のメニューです。
3-5、40㍑、80㍑、200㍑ 調理工程のちがい、車内での仕込みは可能?
3-5-1、200㍑程度の給排水設備を備えたキッチンカーは 車内での仕込みができる
これまで、キッチンカー車内のキッチンで仕込み行為ができる都道府県もあれば、車内での仕込み行為は禁止の都道府県もありましたが、改正・食品衛生法の施工後に200㍑程度の給排水設備を備えた状態で、営業許可を取得した場合、どの都道府県でも「車内での仕込み行為」が可能になります。。。
3-5-2、車内での仕込み行為とは
次に「車内での仕込み行為」について説明します。
ひとくちに仕込み行為と言っても、洗う、切る、下ごしらえする、というように様々な工程がありますが、各都道府県ではこの「車内での仕込み行為」をなんでもかんでも認めるということにはならない、ということでした。各都道府県に検討会を立ち上げ、車内ではどの仕込み行為までを認めるか、どの仕込み行為は認めないかのガイドラインを策定しているようです。
「車内での仕込み行為」の範囲については、各都道府県でちがいが出てくる可能性があり、よくよく注意が必要です。また、この「車内での仕込み行為」のガイドラインについては、おそらく2021年6月まで情報は出てこないと思われます。
3-5-3、40㍑、80㍑、車内での仕込み行為ができない場合
現法の営業許可で、車内で仕込み行為ができない都道府県のキッチンカー事業者の方はすでに下記のいずれかの方法で調理していると思います。
営業許可を受けた固定店舗の飲食店で仕込み行為をおこない、キッチンカー内で加熱や盛り付けをおこなって販売する
すでに仕込み済のカット野菜や冷凍食材を使って、キッチンカー内で加熱や盛り付けをおこなって販売する
改正・食品衛生法の施行後は、40㍑程度や80㍑程度の給排水設備を備えたキッチンカーは、このいずれかの方法で調理することになります。ここは提供しているメニューごとに、かなり説明が細かくなりますのでくわしくは管轄の保健所にご確認をいただくとよいと思います。